私たち兄妹に対してぜったい言ってはいけないことの区別くらいできるでしょ。

あなたは私とちがって大人なんだから。



「でも兄ちゃんは…私を大学まで出させてくれるつもりだって、」


「うっそ~、それはひどいよ慶音ちゃん」



私も私で、どんどん自分の立場を無くしてどうしたいの。

もう話さないほうがいい。
この人とは距離を置いたほうがいい。


わかっているのに、希望を信じてしまう。


これが普通なんだ。
普通はみんな、こう思うんだ。

私の周りにいる人間が、たまたま、優しかっただけ。



「いい?慶音ちゃん。落ち着いて聞いて考えてみて?今まで成海くんはずっと慶音ちゃんのために自分の人生を棒に振ってまで我慢してきた。だから次は……慶音ちゃんの番だよね?」



私の大学費用を貯めてくれているなら、そのお金は麻衣子さんとの未来に使うべきだ。

いずれの未来で生まれるふたりの子供に使ってあげるべきだ。



「私のためにもこれ以上お兄ちゃんを、成海くんを縛らないであげてよ。…慶音ちゃん」



何もかもあなたの言うとおりだよ────……麻衣子さん。