最初の頃は兄との関わり方が分からなくて、お母さんもお父さんも居なくなってどうしたらいいか分からなくて。
端っこで気配を消そうとする私を見つけた兄は、必ず今みたいなトーンで名前を呼んでくれた。
「…兄ちゃん心配しすぎ。もしいじめられてたりしたらアザとかあるはずだけど、そんなの無いから大丈夫だってば」
できなかった。
どうしてか、甘えられなくなった。
それは兄のうしろ、キッチンに立つ女性の目が怖かったから。
どうしてそんな顔をしているのだろう。
私のことを心配してくれているものとは、また違う目があった。
「成海くん、お風呂冷めちゃうよ?慶音ちゃんも次入らなきゃだし、話は私が聞いておくから。こういうときは女同士がいちばんなの」
「…こいつにはもうデザートもお菓子もあげなくていいから。セロリでもやっといて」
「えっ、なんでよ!」
セロリ?
なんでセロリ…?
わざわざ私が苦手としている食べ物を指定され、ついすかさず。



