このキョーダイ、じつはワケありでして。





「こんなに揃っていればいろいろ安心ね」


「…いろいろって?」


「ふふ。ほら、ゆくゆくは……ね?」



年頃の高校生にはちょっとだけ落ち着かない雰囲気だ。

それくらい私にとって初めてのことだらけだった。


兄が同年代ほどの女性と話しているところを見るのも、麻衣子さんがいることでなぜか兄ちゃんさえも他人に思えてくることだって。



「慶音。今日おまえ、体育はバスケだったはずだろ」


「え?」



食事が終われば彼女は当たり前ように洗い物をしてくれる。

あとは私がやるのでもう帰ってください───と、いつからか最低なことを思うようになった。


リビングで宿題を片付けながらもうつろうつろにスマートフォンをいじっていると、お風呂へ入りに行ったはずの兄が険しい顔をして戻ってきた。


なぜかピリピリした威圧感で迫ってくる兄ちゃんの手には、私が通う高校の指定ジャージ。