『これ以上はだめ』
『ええ!なんで!今日は残さないから…!』
『うっわショボい記憶力~。昨日もまったく同じ決意表明してたの忘れた?もう少しでご飯できるから宿題でもして待ってろって』
クッキーじゃなく、兄ちゃんはスナック菓子だった。
兄が用意してくれるお菓子はすべて、ゼリーとかアイスとか、袋から取り出すだけで食べられるもの。
つい食べすぎて夕飯を残してしまうから、いつもいつも取り上げられちゃって。
そうだよね。
兄ちゃん、いつも慣れないなかでご飯を作ってくれた。
それ残すだなんて、ほんと無慈悲な妹だ。
『慶ちゃん、もうすぐバレンタインだよ』
そうそう、バレンタイン。
それだけはね、兄妹揃って頑張ったんだよね兄ちゃん。
『つくらない。…去年失敗したもん。咲良には買ったものあげる』
ずっと母親と作っていたイベントは11歳から無くなった。
母親がいなくなって初めてひとりで作ったバレンタインチョコは面白いほど失敗。



