“成海くん”、だって…。
兄ちゃんが女の人にそう呼ばれるところなんか初めて見るから、聞いている私のほうがニヤケそうだ。
「兄ちゃんも…助かると思います。ありがとうございます」
「そうだ、クッキーあるから食べて。部活で小腹が空いたんじゃない?」
「あ…すみません」
ずいぶん慣れているんだと。
出会って1ヶ月ほどだというのに、すでにこの家に住んでいたかのような空気感。
逆に私が他人みたいになってどうする…。
「クッキー…」
この先いろいろ順調に進んで、麻衣子さんと兄ちゃんが結婚した場合、私は本当に彼女の義理の妹になる。
母親もよく作ってくれたと思いながら洗面所で手を洗っていると、ふと鏡に映った自分の姿が過去の思い出を甦らせた。



