「わ、私っ、天瀬がいたからこの高校受けた…!高校でも一緒に空手やりたかったから…!」
それを伝えてどうなる。
言ったところで私は、なにを期待しているの。
「─────…俺も」
期待どおりの返答が、返ってきた。
緩やかに引き上がった骨格と、やさしい眼差し。
言ってよかったと多幸感と満足感でいっぱいになる、それはまさしく初めての顔だった。
「あ。おかえり慶音ちゃん」
そして家に帰ると、女性物のヒールが高い靴が真ん中に置いてある。
横に並べられるように兄ちゃんの靴。
私はどうしようか悩んでいると、エプロン姿の麻衣子さんがちょうど通りかかった。
「え、どうして今日…?土日だけのはずじゃ…」
「これからは平日もお邪魔しようと思って。平日のほうが成海くんも忙しいと思うし、支えてあげたいの」



