「万が一のときは兄ちゃんがいるし、天瀬が心配してくれることないよ」
………ほんとうに私って可愛げがない。
ここは天瀬に甘えたほうがいいんじゃないの、共通点が増やせられるなら最高でしょって思う自分はもちろんいる。
けれど最近の私はチャラ男のボディーガードとは思っていなかった。
ほんの軽いことでも呼ばれて、そのたびにふたりでゆっくり話す時間があって。
変な話、その時間を作るために呼び出されている…感じもする。
「…俺のことも…頼ってくれていいよ」
「え…?」
「俺も成海さんみたいな人間になりたいから。それに四宮は俺の大切な…友達、だし」
大切な、友達。
私には十分すぎるほどの言葉だ。
「天瀬…!」
ここしかないと思った。
休み時間はどの場所も騒がしく、私ひとりが呼び止めたところで目立ちはしない。
すこし離れた先ですぐに顔を向けてくれた天瀬は、薄紅色をした形のいい唇から「どした?」と、スローモーションに届けてくれる。



