「お兄さんは?どんな感じ?」
「どんな感じって……普通ですけど」
「ふつう…か」
とくに変わりなくだ。
変わらなすぎて私が緊張してしまうくらい。
週末は麻衣子さんが夕飯を作りにきてくれるようになったので、兄も兄で仕事に集中できる頻度が増えた。
ぜったい助かってはいるはず、で。
ただせっかく私が「良かったら泊まっていってください」と機転を利かせてあげても、兄ちゃんがそうはさせない。
やはり私以上に警戒派なんだと。
「慶音、なんかあったら俺になんでも言って。相談に乗るし、助けにもなるから」
「ないです。ならないです」
「即答かよ。わかんないっしょ」
「あったら兄ちゃんに言うんで平気です」
「…それができなくなった場合、ってことだよ」
もっと喜んでくれるものだと思っていた。
家に上がり込んできた夏休み、あなたも天瀬みたいに兄ちゃんに憧れとか尊敬の目を向けていたから。
みんなもっと喜んでくれると思ってたのに……。



