『兄ちゃん……ねえ』
血縁関係はないし、両親同士の再婚がなかったら顔も名前も知らない他人だった。
なにも知らないこいつは俺を兄と呼び、俺を身内のひとりだと解釈している。
『俺の……いもうと…』
たったひとりの妹。
たったふたりだけの、兄妹。
世間一般、普通の兄妹がどんなもんかなんて知らないけど、こんな俺たちもキョーダイって言って正解?
てか、そんなことより……さあ。
『あったけー…。……なにこいつ』
こんなあったかいの、子供って。
それとも家族だから?
たったひとりの妹だから?
おなじ匂いになったのは、いつからだろう。
俺のお下がりだろう服をパジャマにしている姿に、なぜか身体の芯があったまる。
『────……慶音』
ぜんぜん兄貴らしくないけど。
兄貴らしいことなんかしてやれてないけど。
名前、忘れてないよ俺。
それだけはちゃんと覚えてる。



