俺に帰ってきてほしいの?
だとしても遊んでやらないよ。
8歳も離れててどう遊べっていうんだ。
『おうちが嫌いなの?』
『…そーでもないけど』
『じゃあ、みんなのこときらいなの?』
『…………』
おまえ反抗期って知ってる?
思春期になれば大体が通る道だから、って丁寧に教えたところで時間の無駄か。
『それもちがうよ』って、ガキんちょにはこのくらいテキトーでいい。
『いつか帰ってきてくれる?』
『…いつかね、気が向いたら』
このときの俺は、まさかこの妹のために帰ってくる日が本当に訪れるとは思っていなかった。
こいつとふたり暮らしが始まるなんて。
血の繋がらない妹とふたりっきりで生きてくとか。
『もしもしお嬢さーん。…俺は布団じゃないんだけど』
いつの間にかスゥスゥと気持ちよさそうな寝息が聞こえてくる。
こんな血だらけでボロボロな兄貴の腕のなかで眠れるって、やっぱおまえすごいよ。
だれを見て育ったらそんな度胸ある子に育つわけ?



