こわいこと言うなよおまえ。
なに、ヒトひいたのって。

いきなり兄貴を犯罪者にするつもり?

せめて“殴ったの?”とかさ、まあそれも犯罪っちゃ犯罪になるか。


にしても“ヒト轢いたの?”はもっとやばいだろ。


つんつんと、本当に俺が死んでいると思ったのかつついてくるちびっ子。



『………ふっ』



気ぃ抜けた。

馬鹿馬鹿しすぎて我慢ならずに吹き出してしまうと、そいつは『生きてた!』と嬉しそうに言うもんだから。



『わあっ』



小枝みたいな腕を引っぱれば、すぐに俺のなかにすっぽりと埋まってくれる。



『…何歳になったの、おまえ』


『9さい』


『あれ?このまえ入学式じゃなかった?…大きくなったねえ』


『うん』



ほんとは喋るのもキツいし、チカラもほとんど入らないけど。

逆にこういうときくらいしか話せない気もしたからさ。