『成海くん…!!やべえよシンヤが拉致られた…!!』
『シンヤってだれ。てかおまえも誰』
『ええ!?ひでえよ成海くん…!!テツだよテツ!!哲明(てつあき)!!』
この頃の俺は少し、退屈だった。
家に帰れば母親と父親と小さな妹が平和に笑ってて、そこで一緒に笑っている人生も悪いものではないんだろうけど。
ただちょっとだけ、若気の至りってやつ?
幼い頃から身につけていた空手を間違った方向に利用してしまっていたのが、当時の俺だ。
『成海くんとは中学からの仲じゃねえか!!好きな食べ物はたい焼き、嫌いな食べ物はゴーヤ!!好きな女のタイプは───』
『金髪ロング、だっけ。さっさとバイク出せよテツ』
『え、バイク…?どっか行くのか…?』
『シンヤ、拉致られたんでしょ。ちなみに俺は黒髪ショート1択~』
『っ!成海くんまじかっけェ!!!』
正確には15歳、中学3年の卒業が近づくあたりから家には帰らなくなった。
友達や後輩の家を渡り歩いて、そこで出会う女のところにお世話になったりと自由気ままに過ごす日々。



