『成海、こっちにおいで。あなたに紹介したい人たちがいるの』
その日。
11歳だったおれに、新しい家族が2人もできた。
『はじめまして成海くん。急に知らないおじさんが来てびっくりさせちゃったかな』
ひとりは、気弱そうな男のひと。
前々から母親からなんとなく聞いてはいたけれど、実際目の前にするのは初めてだった。
どうやらこの人が今日からおれのお父さんになるらしい。
『この子は慶音ちゃんよ。今日から成海の妹になるの』
『けーと…?』
『そう。けいと』
そしてもうひとり、初めて会ったおじさんの腕に抱かれていたちっこいの。
男みたいな名前だと思って、おれは嬉しかったんだ。
おれは学校でいつも『女みたいな名前だ』と言われていたから。
逆だねって、うれしかった。
『…けいと。慶ちゃん』
『ふふ。いっぱい名前を呼んであげてね』
この日からおれの妹になった女の子は。
まだ3歳になったばかりの、あどけなくてかわいい子だった───。



