部屋に案内する私のぎこちなさを助けるように、兄はチラッと咲良の背後に立つ新顔を見つめた。



「いらっしゃい、天瀬くん。男の子の友達がうちに来るなんて初めてだ」


「…お邪魔します」



なぜか天瀬 真幌を連れてきた幼なじみ。


ねえ咲良、聞いてないよこんなの。

思い返せば昨夜「じつは慶音ちゃんにサプライズがあるの!」なんて、意気込むように言ってた気がするとしても…。



「天瀬くん巨峰は好き?食べられる?」


「あっ、はい。…なんか俺まですみません」


「うん、聞いただけ」


「…………」



これも兄ちゃんのスキンシップの取り方で、緊張している人間に対して和らげてあげる技のようなもの。

とくに落ち込む必要はないし、兄ちゃんがこの絡み方をしたときは相手を気に入ったってことでもあるからポジティブに考えて天瀬。


そんな今日は勉強会。


簡単にいえば夏休みの宿題をいっきに消費しちゃおう会だ。