「ごめんね慶音ちゃん、急に押しかける形になっちゃって…!」
「それは別に…いいけど」
「慶音ー?暑いから早く上げてやんなって」
「あ、うん」
向かい側に住む幼なじみはいつだって謙虚だ。
小学校の頃から約束した時間どおりに毎朝インターホンを鳴らしてくれるし、今だって気をつかう必要もないのに手土産を持って玄関に現れた。
「成海さん、これ、うちのお母さんからで……」
「え、巨峰じゃん。いつもお世話になってるのはこっちだってのに。ありがとう咲良ちゃん。あとで勉強の合間にでも出すよ」
「あっ、いや、慶音ちゃんと食べてもらえれば…!」
「こういうのってみんなで食べたほうが美味しくない?それに…」
────夏休みに入って数日目。
部活が休みの今日、咲良から「みんなで勉強会しない…?」と電話がきたのは昨夜のこと。
“みんなで”って言っていたから、咲良とふたりではないことはなんとなく察していた……けど。



