『けいとが、慶音がっ、わたしが空手なんかしてたからっ、賞状もらえなかったから…っ、だからお母さんとお父さん死んだ…!!』
『…ちがうってそれは。慶音のせいじゃない。雨だったからだよ、雨がぜんぶ悪い』
『おかあさんっ、お母さんに会いたいぃぃ…っ、にいちゃんのばかぁぁぁ…っ!!』
『おっと、いいパンチだ。でもせっかくの空手を殴るために使ってたら俺と同じになるよ。…大丈夫、兄ちゃんがいる』
しばらく雨の日は駄目だった。
ニュースで土砂災害が放送されると、すぐにテレビをコンセントごと切る。
雨が悪かったんだよ、私のせいじゃない。
お天道様がいじわるすぎたんだ。
その場所だけしっかり補強工事していなかった人間も悪い。
そう思うしかやってられなかった。
私も兄ちゃんも。
『そんなの言ったら兄ちゃんだって何度母さんと父さんにウザいって言ったと思う?もし慶音のせいだって言うなら……俺のせいのほうが大きいよ』
震えていたね、いつも。
あなたは笑いながらも震えていた。



