「志摩(しま)くーんっ!こっち向いてー?」
「ん?」
「やったあっ、ツーショットゲット!」
「あ、SNSに拡散しないでよ?スカウトとかきまくって面倒だから」
私が通う高校には、とんでもなく女子生徒から人気な男がいる。
朝イチで待ち伏せする女子のかたまりを抜けて昇降口へと歩いてくる本人。
……は、すでに数人の女たちに囲まれている。
見ているだけで暑苦しく、やかましいうるさいさっさと消えてほしい。
「志摩せんぱいっ、これ、クッキー焼いてきたんですっ!」
「えー、俺に?」
「はいっ!!」
「ん、授業中たべるよ。ありがとね」
授業中ってなんだ、先生に怒られて退学になってしまえ。
心のなかで悪態をつきながらも私はローファーから上履きに履き替える。
タイミングが悪かった。
今日はツイてない、最悪、誤算だ。
部活の朝練がなかった今日、そいつが登校してきた時間と被るとは…。



