「───…とてもお似合いです。お綺麗です、理沙お嬢様」



舞踏会は日が暮れてから。

普段からゴージャスな光をまとう学校はいつも以上にライトアップされ、会場となるホールはまるでおとぎ話に出てくる世界。


そんなおとぎ話の主人公になりたくて、どのお嬢様も気合いを入れてドレスアップをする今日。


着替え終わってメイクも済んだ私が部屋から出れば、執事は常套句(じょうとうく)のような言葉を並べる。

去年であれば瞳を輝かせて笑顔を見せてくれたというのに、今年はどこか静かだった。



「今年のドレス、お気に召していただけましたか…?」


「…ええ」


「…よかったです」



専属執事がお嬢様に似合うものを選ぶことが毎年の恒例となっていて、今年のドレスは思っていたよりシンプルな色合いだった。


目立たないし、装飾品も最低限しか付けられていない。

この執事がどうしてそれを用意したのかと、探ることはやめた。



「髪、…お願いできる…?」


「…かしこまりました」



メイクは碇がするよりも自分でしたほうが慣れている。

プロのメイク師に頼むこともできるのだけど、そこまで意気込む気持ちもなくて。