でもそれは私からの指示じゃなくて、あなたの意思でやって欲しいのに…。
だから言いたくないの、言えないのよ。
「…理沙お嬢様、」
「っ、ひゃ…っ」
本革で作られたソファーに擦れた音が響いた。
そのまま迫ってきたかと思えば、私を囲うように両腕が伸びてきて。
「……指示を、してください、」
「いやっ」
「そんな顔をしたら期待してしまいますよ…、俺みたいなCランクは」
期待……?
期待って、どういう…?
「…この涙は俺と離れたくないものでしょう…?」
「……え…、」
涙……?
私、泣いていたの……?
いつから泣いていたの…?
戸惑っている頬にやさしく触れた手のひら。
すくうように拾って、ぎこちなく拭ってくれる。
「それで、佐野様とは結婚したくない涙でしょう…?」
「っ、」
「…俺はあなたの専属執事です。あなたのことは誰よりも見ていたから、わかるのです」
だったら私の気持ちも分かっているはずなのに。
碇、あなたが求めているものはなに…?



