けれど、ひとつも素直に言えないのだから嫌になる。
そのぶん心臓はどんどん苦しくなって、自分ではどうしようもないくらい。
「っ、碇、」
「…はい」
結婚なんか、したくないわ───…。
別に卒業と同時に花嫁になれなくたって、留学をするってのもひとつの手なんじゃないかしら。
もしそうなったら、もちろんあなたも私と一緒に来るのよ。
どう?それも楽しそうじゃない?
「…なかなか、上手になったんじゃない?」
ああ、言えない。
ふるっと震えた唇をなんとか誤魔化しながらも、上から目線に微笑んでしまった。
「…ありがとうございます、理沙お嬢様」
お化けに怖がって、虫に怖がって、それでも動物と子供には好かれて。
賑やかで、おっちょこちょいで、一生懸命で。
関わるたびに笑顔になれるような生活は、佐野様とのあいだにあるわけがなくて。
たとえあったとしても、私は佐野様とのものは望んでいなくて。
「────……、」
碇だからこそなのだと。
私は初めて気づいてしまった───。



