すぐ頭上から返事が落ちてくる。
もちろん目を合わせることなんかできないから、スッと俯くしかなくて。
私があげたアスコットタイを身につけてくれていることとは裏腹に、出会ったときと比べて近づいた身長差。
「きゃっ…」
くいっと、引き寄せられた腰。
どうしてそんなことをするの?なんて聞くこともできないから、ただされるがまま。
「ちょっと!あたしの足踏まないでよ八木(やぎ)…!」
「すみませんお嬢様…!」
「もう西園(にしぞの)っ!私に合わせてって言ってるでしょう!」
「かしこまりました…!」
周りの声なんか聞こえない。
だとしても会話だってない。
ただ静かに手を握られて、腰を引き寄せられて、ゆっくりと流れに身を任せて。
ぎゅっと力の加えられた熱い手に、私も少しだけ握り返して答える。
「…理沙お嬢様」
呼ばれて、反射的にも顔を上げてしまった。
「っ…、」
やめるなんて許さないわ、碇。
あなたはずっと私の執事なんだから。
あなたさえ近くにいてくれれば、私は愛のない結婚をしたって乗り越えられる。



