もっと求めて、欲しがって、お嬢様。





あんな言葉、嘘でも言ってほしくなかった。

執事をやめる、なんて。


あなたは嘘をつけるほど器用な人ではないことは私がいちばん知っているから。

それが本心なのねって、思うしかなくなるじゃない…。



「面倒になったの?」


「え…?」


「佐野様とのことっ、あんな男に嫁ぐお嬢様の執事なんて面倒になったんでしょう…!!」


「ど、どうしてそうなるのですか…!!違います!!断じてそれだけはないです…!!」


「じゃあどうしてやめるなんて言うのよ……っ」



やめたいの……?

こんなお嬢様の執事、本当はずっとやめたかったの…?


じゃあどうしてこんなことするの。

どうしてそんなお嬢様と同じベッドで寝て、あんなにも優しい顔をしていたの。



「落ち着いてください理沙お嬢様、」


「だってっ、だって…っ、もう出ていって…っ!」



いやよ、出て行かないで。

どうして思っていることと反対の言葉が私の口からは出てしまうの。


もう嫌だ…。

こんな自分も嫌だし、こんな自分にさせてくる碇も嫌だ。



「理沙お嬢様!」


「っ、」