もっと求めて、欲しがって、お嬢様。





どうしてそんなことを言うの。

さっき「俺が聞けるうちに」って、確かに碇は言っていた。


やめる……つもりなの……?

あなたは私の執事をやめること、ずっと考えているってこと…?



「……はなして、碇、」


「……!」



震える声を一生懸命おさえて放つ。

寝ていると思っていたのだろう執事は、驚いているのかすぐに反応はしてくれなかった。



「離してっ!」



やだ、離さないで。



「やっぱり向こうに行って…!!」



行かないで、どこにも行かないで。



「理沙お嬢様…、」



ぐいっと無理やりにも腕から逃れる動きをすれば、パッと離されてしまった。


どうして離してしまうの。

もっと、もっと強引にでも繋ぎ止めればいいのに。



「バカ…っ!!」


「わっ、」



腕は離されたけれど、ベッドからは降りない碇。

そんなものにホッとして、だけど悔しくて悲しくて、ポカポカと叩いた。



「な、泣いているのですか…?お嬢様、」


「泣いてないわ…!!」


「えっ、ではこれは……鼻水ですか…?」


「なわけないでしょ…!!なんでそうなるのよ…っ!!」


「ひっ…!すみません…!!」