それでも強く優しく、一般的な執事がお嬢様に対するものとは比べ物にならないくらいの。
『私は、ずっと理沙お嬢様のお傍にいます。この先なにがあっても…います』
『…うん』
『それが私の……“俺”の、幸せですから』
“私”ではなく、“俺”なんて。
ちょっとだけドキッとしてしまった自分が悔しい。
『じゃあもし私が佐野様と上手くいかなくて破談になって、そのあと嫁ぎ先が見つからなかったら…、
責任取ってあなたが貰ってくれる?』
なにを言ってるの、私は。
執事とお嬢様の恋愛というものはタブーだ。
そんな前例は今まで1度だって見たことも聞いたこともない……というのは、はっきりとは言えないけれど。
『───…わかりました。でしたら早く破談してください、理沙お嬢様』
その執事は、ヘタレなCランクは。
腕から離れようとした私を逃がさないように引き寄せて、少しだけ乱暴な動きを見せてから。
『なので俺は、これからはそれを望みながらあなたの隣にいます』
初めて見るいじわるな顔をして、初めて聞く甘い声をして。
男としての顔を見せて。
私を抱きしめる力をぐっと込めた───。