「どうぞっ!」


「……こういうときは早いのね、」



ものの数分でマグカップが手渡された。

ほわっと湯気が立って、ぷかぷかと浮いたマシュマロの誘惑に負けてしまった私。



「あの…理沙お嬢様、」


「なによ、」


「……わ、私はっ、床で構いません…!」


「は…?」



それはもう土下座をする勢いだった。

ソファーに腰かける私の前、小さくなるように床に座る執事。



「ですので…っ、今日は理沙お嬢様のお部屋で一緒に寝かせてください…!!」


「……」


「決して邪魔はいたしませんので…!太陽が昇ったらすぐに出ていきますのでっ!!」



そういう問題じゃない。

はあ!?と、叫びたい気持ちすらどこか遠くへ行ってしまった。


だって……すごく震えてるんだもの。

こんな存在を前にして冷たく言うほうが私にはできそうになかった。



「布団もなくていいです…!!」


「…碇、あなた何歳よ」


「23です!!」


「……よく堂々と言えたわね」


「はいっ!!」



もうだめだ、彼はもはやプライドというものを捨てきっている。