「理沙お嬢様っ、ご夕食の支度ができました!」



扉の前から明るい声がかかる。


聖スタリーナ女学院は全寮制。

学校から近い場所にある、セキュリティ万全なデザイナーズマンション。

……に、専属執事と2人で暮らす仕組みとなっていて。


もちろんそれぞれのプライベートが確保できる個室はある。

万が一お嬢様になにかあったときのために備えて一緒に暮らすという制度になっているだけで。



「理沙お嬢様…?どうかされたのですか…?」



返事がない私に戸惑いに変わった声が聞こえてくる。

それでも私は気にすることなく、とあるものをじっと眺めていた。



「しっ、失礼いたします…!」



ガチャッ───。


なにかあったのかと不安が込み上げてきたらしい碇は、少し焦ったように私の部屋のドアを開けた。

そこでようやく、意識は戻ってくる。


どうして勝手に入ってきているの、と。

そう言えなかったのは、私が手にするそれを目にした執事が優しい顔をしていたから。