『うぶ…っ!!理沙お嬢様…!助けてください理沙お嬢sうぶぶぶぶ……っ!!』


『………』



絶望的なまでに、泳げないということ。


風に飛ばされてしまったサンダルを屋敷内のプールから取ってもらおうとしただけなのに。

逆に足を取られてしまったのが碇だ。



『……はあ、』



ため息も底をつかない毎日。

けれど、そんな碇を専属執事から降ろさないことには理由という理由があった。



『碇、どうして私なんかの執事になったの』


『…どういう意味ですか?』


『……もっといるじゃない。素直で優しいお嬢様はたくさん』



私は小さな頃から、ちょっとだけ素直になれないところがあって。

相手のことも自分のことも認められないところがあって。


ツンツンしてるイメージを持たれやすくて、こんな自分だから仕方ないと諦めている部分もあって。



『まぁ、命令なら仕方ないかもしれないけど。あなたもツイてないわね、
初めて専属となったお嬢様がこんな可愛げもないお嬢様で』


『───いいえ。』