「大丈夫ですよ理沙お嬢様、この子は人間に慣れています。引っ掻いたりもしません」
「……、」
猫なんて触ったことがない。
もし飛びついてきたら?
シャーッて牙を見せてきたら…?
想像するだけで逃げてしまいたくなった私とは反対に無邪気に笑っている碇。
執事の背中に隠れるようにしながらも、そっと近づいてみる。
「ほら、怒らないでしょう?」
「……やわらかい、」
「女の子でしょうか?毛並みもきれいです」
優しく撫でてみると、ゴロゴロゴロと音を出してくれる。
それは怒っているわけではなく、リラックスしてくれている反応だという。
「やっぱり私は理沙お嬢様にはずっと笑っていてほしいです」
「…私はそこまでエマみたいに笑えるわけじゃないわ」
「はい。ですが、私にはちゃんと見えていますから」
今の私の顔は、ほんとうに年相応に笑っているんだろう。
無邪気な笑顔は出せなくとも心は穏やかで、碇はそんな私の顔が好きだと言ってくれる。



