もっと求めて、欲しがって、お嬢様。





「……遅刻だわ。どうしてくれるのよ碇、」


「えっ、あ…っ!!すっ、すみません理沙お嬢様…!私はなんてことを……!!
この手ですっ、この手が勝手に…っ!!」



そして、結局はワケのわからない言い訳を並べて頭をさげてくる。


本当に見ているだけで気が抜ける。

気づけば笑顔になれて、難しいことを忘れていて。



「もういいわ、このあとの授業はサボる」


「えっ…、よろしいのですか…?」



まさか私がそんなことを言うなんて。

もしかすると私だってバカエマに影響されてしまったのかもしれない。



「ええ。それで…もっと佐野様に呆れられて破談にしてもらうの。…なんてね、」


「……いえ、そうしましょう」



離れてしまった手はもう1度繋がれることはなかったけれど。


太陽の光が映し出した影には、私に手を伸ばそうとしながらも躊躇って。

戻しては伸ばしてを繰り返す執事の姿がはっきりと見えた。



「ふふっ」



私から出た珍しい音すら聞こえていないくらい、それはもう必死だから。