そして何より彼は、必ず小さな子供たちから秒速で人気者になれてしまうという特技を持っている。
「精神的だけではなく、いずれはそれが悪化して肉体的にも苦痛を与えられてしまうかもしれません」
「…そのために、あなたがいるんじゃないの、」
私の言葉に、碇は目を見開いた。
おでこはコツンと優しく触れ合ったまま、目と目がバチッと合わさる。
「…はい。“俺”は、お嬢様のお言葉でしたら何だとしても聞きます。
たとえ相手が佐野様だとしても……俺があなたをお守りいたします」
そんな顔ができたの、碇。
いつもいざというとき情けなくて手のかかる執事なのに、今は逸らしもせずまっすぐ見つめてくる。
「…じゃあもし、私が海に放り投げられても守ってくれる?」
「うぐっ、そ、その際は酸素ボンベをつけてお守りいたします…!!」
「バカ。そんなことしてるあいだに私は溺れてるわよ」
「では明日からバタ足の練習から始めます…!!」
まっすぐで、一生懸命で、飾りっけがなくて。
私がどうしてバカエマと友達になれたのかがやっと分かった。
それは、彼女は碇と似たところがあるから。



