「お嬢様はモラルハラスメントという言葉をご存知ですか…?
あなたの大切な婚約者様に対して大変失礼だとは重々承知しておりますが…、佐野様はそちらに該当されると思うんです」
だから私を佐野様と結婚させたくないの…?
じゃあ碇はそれを心配してるだけってこと……?
そう思うとどこか今以上に落ち込んでいる私がいて、もっと悔しくなって平気なふり。
「別にいいの、お互いに愛情なんかないんだから」
「理沙お嬢様っ、それは、そのような人と家族を作るということなんですよ…?」
「…わかってるわよ、」
「わかっていません…!!そんなの駄目です…!!」
強めの声が響いては消えて、しんと静寂に変わった。
そこでもお嬢様を驚かせてしまったことに対する「申し訳ございません」を忘れているあたり、やっぱりCランク。
けれど彼は忘れているのではなく、言えないくらいにいっぱいいっぱいだということ。
「……だめですよ、そんなの…、」
「…どうして碇がそんな顔するのよ、」
「私は理沙お嬢様の笑顔が大好きだと…、ずっと言っていたじゃないですか、」
「っ…!ちょっと碇、」



