もっと求めて、欲しがって、お嬢様。





「でも逆に泣かせる瞬間はヤバいくらい興奮するんだわ。俺、アリサの泣き顔が大好きらしくてさ」


「……あっ、そーいう…」


「うん。でも俺よりすごい人はここにいるから」



と、早乙女さんはずっと黙っていた早瀬さんの肩をぽんぽんと叩いた。



「俺のかわいい義妹なんだから優しくしてやってよ?早瀬さん」


「無理だな。どんどん俺好みになっていってる」


「ね、この人やばいから。手の早さもSランク、それも早瀬だけにって。はっはっは」


「…だからそれ、まったく面白くねえんだよ」



早乙女さんの腕をぐいっと退かしながら鬱陶しそうな顔をしている早瀬さんに、どこか親近感が湧いた。


Sランクだとしても完璧じゃない。

Sランクだとしても男なのだと。



「ちなみに碇くんは九条のお嬢さんが卒業したあとはどーするか決まってんの?」


「え、それは……まだ何も」


「なら俺たちと一緒にイタリアに来る気ない?」


「へ…?イタリア…?」


「おい早乙女、いい加減にしろ」



俺はいつまで執事を続けるのか、理沙お嬢様が卒業したあとはどうするのか。

そんなものをまだ考えられていなかったため、早乙女さんの言葉を詳しく聞いてみたかった。


けれど早瀬さんは「やめろ」と言いたげに見つめてくるし、なにがなんだか分からない。