聖スタリーナ女学院は、少し変わった教育方針のうえに成り立っている高校だった。


どうしてここまで礼儀や作法を徹底するのかというと、それは御曹司に嫁ぐためのふさわしい花嫁を育てることが教育方針だから。

そのため在学中に婚約者が決まった生徒は、言ってしまえば成果を出せているということ。


なおさら破談になんか、できるわけないじゃない…。



「やっぱり出なかったから機嫌が悪くなったみたいでお説教食らっちゃったわ。
…だからちょっと落ち込んでるだけ、心配しないで」



あんなに言ったじゃないか、もっと君は聞き分けのいい子だと思っていたよ。

ガッカリだ、2度とそんなことしないでくれ───だって。


年下の私を見下しているところがあるのか、自分は絶対だとでも思っているのか。

私の婚約者でもある佐野という男は、そういう言い方をしてくる男だった。



「…彼は、結婚したらもっと危ない人だと私は思います」



すると碇は珍しく神妙な顔つきに変わった。

「危ないひと…?」と見つめてみれば、すぐに首を縦に落とす。