もっと求めて、欲しがって、お嬢様。





息を吸う隙間から、あまい声が囁いてくる。

離れてほしくなくて、碇の首に回した手にぐっとちからを込めた。


もっと、もっと───、

だんだん深くなっていくキスをねだっているのは私。



「いかり、もっと…して、」


「…はっ、……はーっ」



獲物を前にした動物みたいな息。

それは自分を落ち着けるものじゃなく、先へ先へと進みたくてたまらないものに聞こえる。



「もっと深く…っ」



余裕なく覆い被さっていた碇が、とうとう私の隣に移動する。

そちらの体勢のほうが密着できるみたいで、すぐに私の身体と後頭部に回った手。


ふかく、はげしく、もう離れないように。

奥の奥までお互いを感じられるように。



「っ…は、…理沙お嬢様、」


「なまえ…っ、呼んで…っ」


「……理沙、」


「ひゃ…っ、ぁ、っ」



カリッと、耳に歯を立てられる。

お互いに顔を真っ赤にしながら、なにが正しくて間違っているのかも分からないまま。


だけど、この気持ちだけは本物なんだと確かめ合った。



「いかり…、もっと、」



ドレスが破れたって構わない。

私は聖スタリーナ女学院の生徒よ?
裁縫だって装飾だってお手のもの。