もっと求めて、欲しがって、お嬢様。





いまだに現実感としてはっきりと受け入れられない私とは反対に、彼は心から安心していた。


それにしてもやっぱり“佐野”って……。

素の碇はずっとそんなふうに思っていたのかと考えると、笑ってしまう。



「…叩いちゃったわ」


「いいんです。俺も殴ってしまいましたから同じですね」


「今回の件で…かなり成績が下がったかもね、私」


「問題ないです。どちらにせよ…理沙お嬢様は俺が貰いますから!」


「っ、」



そうだった……。

破談のことに学校のこと、それから碇の件、早乙女さんやエマの力も加わることで話は軽く片付くだろう。


そうなると、本当に私はいずれ碇と一緒になる……って、ことよね。



「お、お弁当、毎日つくってあげる…から」


「本当ですか…!うれしいです!」


「おにぎりは文句言わないでよね…!」


「もちろんですっ!俺の───…近い未来のお嫁さん」



想像してしまって、なに言ってるのよ…!なんて言葉は飲み込まれた。



「んっ…、んんっ!」


「……理沙お嬢様、もっと俺を求めてください」


「…いか、り…っ、」


「もっと欲しがって、…俺はそんな理沙お嬢様が見たいです」