ぷいっと、わざとらしく顔を背ける。
そんなわがままな反応に困っているかと思いきや、そこまででは無さそうだった。
むしろ愛しげに見つめては嬉しそう。
そりゃあ私の専属執事なんだもの。
こんなの、あなたは慣れっこのはず。
「わかりました。では、しません」
「えっ、───ん…っ!」
碇、いつからそんなふうに人を騙すようなことを覚えたの。
これが九条 理沙の手懐け方だと言うように、それはそれはスムーズな方法だった。
「んん…っ」
初めてのキスは、初めて好きになった男の人と。
それがこんなにも、こんなにも幸せだなんて。
だんだん慣れてきたみたいで、碇は唇を甘く齧るように合わせてきた。
「んっ、いか…っ、ん…っ」
それから名残惜しさを残しつつも、ぎこちなく離れる。
私はもう、この人しか見えないんだと思ってしまうくらい、目の前は彼でいっぱいだった。
「……すごく…柔らかかったです」
「う、うん」
「…なんか…、気持ちよすぎて、」
「……うん…」



