「理沙お嬢様、俺の下の名前は知っていますか?」
「あ、当たり前じゃない」
「呼んでください」
「……、しょう…たろう、」
───碇 章太郎。
初めて聞いたとき、直感でいい名前だと思った。
「…もう1回、お願いします」
「しょっ、しょうたろう」
「もう1回だけ」
「もうっ!章太郎!」
「はいっ」と、幸せそうな返事が返ってきた。
本当に私のことしか見えていないんだと思う眼差しで、熱い、熱い目で。
思わず伸ばした両手を彼の首に回した。
そのまま引き寄せるように抱きつく。
「おわっ!わりとくるしいっ、苦しいです理沙お嬢様…!」
「うるさい!ずっと…、ずっとこんなふうにしたかったのよ……っ」
「……なんっだ…、このかわいいが過ぎる生き物」
すぐに強く抱きしめ返された。
はあっと、なにかを必死に耐えている吐息と、もう我慢なんかいらない力加減。
「…理沙お嬢様、さっきのリベンジ…させてくれませんか」
「…いやよ、」
「こ、今度こそ優しくします…!」
「…嫌、」



