窓から見える月の光、
静かな、静かな夜。
まるで本当におとぎ話の世界にいて、王子様に抱きしめられているみたいだった。
「……私、も、」
「…理沙お嬢様…?」
「…私も……いつも、期待してたわ」
どうしてもっとしてくれないのって。
強引に、自分本位に奪ってくれないのって。
私はいつもいつも期待してしまっていたから、そうじゃなくて勝手に落ち込んで。
「…して欲しかったんですか…?あのときも、」
ドクン、ドクン。
きゅうっと心臓をわしづかみされた苦しさのなかにある、心地よさ。
好きな人に抱きしめられるとこんな気持ちになるんだと改めて感じた。
「…して、欲しかった、」
ここで、今みたいに。
近いうちに離れるんじゃないかって恐怖が襲ってきて、私も碇も焦ったように苦しいなかで気持ちを隠し合った、あの日。
あのまま続けられていたらどうなっていたんだろうって、今も考えてしまうときがある。
「俺も…したかった…、だからあなたにズルい指示を求めました」



