もっと求めて、欲しがって、お嬢様。





「……すごく…、かっこいい人よ、」


「……へ…」


「でもそれは私だけが知っていればいいの。誰にも見せたくないわ」



今日の姿、みんなが見てた。

よくギャップが大切って言うでしょ…?

もしかすると今日、あなたのそんなギャップにときめいてしまったお嬢様がいたかもしれない。


……私みたいにね。



「………」



……ねえ、ちょっと。

私、もしかしてすごいこと言ってない……?



「っ、よ、よし終わりっ、お風呂に入りたいんじゃない?今日は私がぜんぶ準備するか───きゃ…っ!!」



正面から抱きしめられることは、2回目。

碇はいつも背中から包み込んでくれることが多かった。


だからあなたの顔が見れなくて、あなたも私の顔は見えないから。

今まではそんなふうにお互いが気をつかいながら触れることしかできなかったというのに。



「……そんなことを言われたら…、俺は期待してしまうと言ったじゃないですか」


「っ……」



ぎゅうっと、抱きしめられる。

明かりをそこまで点けていないリビングは、間接照明のみ。