もっと求めて、欲しがって、お嬢様。





無邪気な笑顔を見せた私とは反対に涙を流した碇は、この世界でいちばん格好いい私の執事だった。


エマ、あなたから渡された幸福はやっぱりここにあったみたい。

ほんとうに幸せが落ちてきたわ。



「ねぇ早瀬さん、でもそれって逆に“男としてはSランクだ”って自慢してるようなもんだよね」


「だよな早乙女。俺も思った」


「えっ、あっ、いや別にそういうわけでもなくてですね…!!」



執事としてはDランク。

それでも男としては、最高ランクであるSランク。


ミカエーラさんはそれすら嬉しそうに「ブラボー!」と言って拍手をした。



「でもある意味これって伝説じゃんっ!!Sランクを自ら辞退したDランクだなんて!
あっ、じゃあDランク(仮Sランク)にすればいいんだねっ」



彼女が俺のお嬢様です───と、早瀬さんはミカエーラさんにエマを紹介していた。



「おいっ、そこの下級執事ども!!今日から“碇さん”って呼ぶんだぞっ!」



相変わらずなエマに笑い声が広がって。

台無しになってしまった舞踏会も、いつの間にか素敵なパーティーに変わっていた。