「お嬢様のために婚約者を殴る執事は初めてだと」
「あっ、いやっ、えっ、あぁぁぁ…、やばいです早瀬さん、」
「ふっ、しっかりしろよ」
「HAHAHA! ! !」
通訳をしてくれる早瀬さんの横で、ブルーノ・ミカエーラさんは笑っていた。
碇は世界共通ですべての人を笑顔にできるんだと、私はどこか嬉しくなる。
そんなミカエーラさんは早瀬さんに何やら耳打ちすると。
すぐ近くで見つめていた私も分かるくらい、早瀬さんは「…まじかよ、」という顔に変わった。
「碇、おまえ……、本当にふたつ飛んだぞ」
「…え、なにがですか…?」
「ランクだよ」
「らんく…?」
あたまのうえにハテナを3つは浮かべた碇。
けれど、なんだろう……この緊張感は。
隣にいる私まで緊張する。
それは会長であるおじいさんが私を見て、にっこりと微笑んでくれたから。
「お前を今日からSランクにする、と。ミカエーラさん直々の昇格だ」
「「「………」」」
固まってしまったのは碇だけじゃない。
そわそわしていたエマだって、興奮を抑えられない執事たちだって、お嬢様だって先生だって。
この場所にいる全員が固まって、そして。



