困惑と驚きと、ざわめき。
なかには「あいつはもう執事には戻れないな」と、蔑むように笑う執事仲間だって。
仕えるお嬢様の婚約者を殴る執事だなんて、前代未聞(ぜんだいみもん)なのだから。
「おまえ…っ!!僕は理沙の婚約者だぞ…!!その執事が僕に手を上げるなんて許されると思うか…っ、」
「俺はあなたの執事じゃない。俺は理沙お嬢様の執事だ、彼女の言うことしか聞かない」
「ふざけるな…っ!!破談になんか絶対しないからな…ッ!!」
「だったら俺は何度だって殴る。お前と結婚する時点で俺の大好きなお嬢様の笑顔はどこにもないんだ。
だから…理沙お嬢様を傷つけて泣かせるものなら、この先も同じ回数殴ってやる」
初めて年上に見えた。
初めて、男の人に見えた。
また、かっこいいと思ってしまった。
「警察だ…っ!警察を呼べ…ッ!!こいつを暴行罪で逮捕しろッ!!」
佐野様の言葉に、私はすぐ碇の腕をぎゅっと掴んでいた。
ここに警察が来たとしてもぜったい離さない。
碇が捕まるなら、私だって一緒に捕まる。
「理沙お嬢様、ご心配いりません」
「でも…っ」
「大丈夫です」



