もっと求めて、欲しがって、お嬢様。





まるで私からのそんな言葉を、ずっとずっと待っていたみたいに。



「では、破談にしてよろしいですか?」



鋭い眼差しに戻した碇は、それまでとは比べ物にならないくらい低い声で最終確認をしてきた。


ここで私が答えてしまえば未来はどうなるか分からない。

本当に私の傍にいてくれるのか、相手はお金と立場で何だとしてもできてしまう人だから。


それでも……こくんと、確かにうなずいてしまった。




「…破談に、しなさい…、碇、……これは命令よ」



「────はい。お嬢様の仰せのままに」




立ち上がって10秒もなかった。

彼がどんな顔をして佐野様に詰め寄っているのか、私には見えなくて。



ドガ───ッッ!!!



ホールいっぱいに音が響いてから見守っていた全員が目を開く。

吹き飛ぶように地面に倒れている婚約者、こぶしを握って見下ろす執事。


そう、碇は佐野様をおもいっきり殴ってしまった。



「うわーーっ!!ハヤセっ!碇すごっ!!」


「……あっんの馬鹿…、誰がそこまでやれって言ったんだよ」