だからこそ私が碇を選ぶことは、本当に“碇だけ”を選ぶということ。
「理沙お嬢様。俺にとってあなたは、お嬢様の前に……か弱いたったひとりの女の子なのです」
ぎゅうっと、目をつむる。
溜まった涙を受け止めてくれる彼は、私がずっと求めていた言葉を与えてくれた。
そうだ、私は碇と出会ってから。
あなたの前でだけは背伸びをすることも、取り繕うことも、いつからかしないようになっていた。
「碇…っ」
「はい」
震える手をそっと拾われると、変わらないぬくもりが絶対的な安心を作ってくれる。
「────私も…、あなたと……、ずっと一緒に…いたいわ……っ」
「…はい」
「あなたと離れたくない…、佐野様と結婚なんか…嫌よ……っ、おにぎりは…あなたのために作りたい…っ」
口が裂けても言ってはいけない言葉。
聖スタリーナ女学院の生徒としても、九条グループの娘としても、碇を仕えるお嬢様としても。
「俺も毎日食べたいです!理沙お嬢様手作りのおにぎり!」
碇、あなたはバカすぎるわ。
ほんとうに、バカよ。
“自分の立場を無くしたとしても壊して”と言っているお嬢様に対して、そこまで幸せそうに笑うなんて。



