「でも俺は、理沙お嬢様専用なんです」
「…専用…?」
「あなただけを笑わせます、あなただけを笑顔にさせます。それは俺が何よりも望んでいることですから」
その仮面の下は、泣いてなんかいなかった。
本当に幸せそうに笑っていて、本当に彼は私のことしか見ていないのだと自惚れてしまうほど。
「…でも…、がんばって…きたでしょう、碇」
きっと私が知らないところで、あなたは数えきれないくらいの努力をしてきたはずだ。
今の場所に立つために、周りに馬鹿にされるなかでも必死に這い上がってきたはず。
それを……、それを…。
こんな私の気持ちだけですべてを台無しにさせるなんて、私がいちばんしちゃダメなのよ…。
「では、質問を変えます」
優しいなかに見えた覚悟は、碇らしくて碇らしくないものだった。
「理沙お嬢様は、俺と離れたいですか?」
やっぱりあなたはズルいひと。
自分でもそれを分かっていて、こうして私に聞いてくるんだもの。
「俺は理沙お嬢様とずっと一緒にいたいです」
「───…、」
どれが正しい選択なのだろう。
家柄を守るためならば、私はあなたを切り捨てなければいけない。
佐野様を選ぶとしても同じこと。
この学校の生徒としても、そうだ。



