「大丈夫ですっ、理沙お嬢様!」
「っ…、」
「俺は何があっても絶対にあなたのお傍を離れませんから!」
大好きな満開の笑顔が目の前にあった。
ぽたりぽたりと落ちた私の涙が、目の前にひざまずく碇の血を洗い流してゆく。
“私”ではなく“俺”と言ってくれた理由は、たとえ執事から男に戻ってしまったとしても傍にいる───、
そんな意味が込められていること。
「俺が執事を続けている理由は、“あなたの笑顔を誰よりも近くで見ていたいから”だと…言ったでしょう?本当にそれだけなんですよ」
ランクなんかいらない、名誉や地位なんかクソ食らえだ───。
碇の澄んだ瞳からまっすぐ私に伝わってくる。
「俺はね、理沙お嬢様。あなたの笑顔が見られるのなら、喜んで道化にだってなれるんです」
「…そんなの…ダメよ…、道化だなんて…」
道化師は、誰かを笑わせるためなら自分が馬鹿にされたって構わない人。
仮面の下の素顔は誰にも見せることなく、本当は何を思っているのかを誰にも話さない、とても悲しい存在。
だから碇、あなたは道化なんかにならないで。
もっと自分を大切にして。
あなたは最高なの、誰にも負けない私の執事なんだから。



