エマはまた前に出ようとするから、今度は私が出てやんわりと止めた。
いちばんの理由は、また碇を馬鹿にされたことが許せなかったから。
彼を馬鹿にすることは、私のことを馬鹿にしているのと同じだ。
「佐野様、碇は私の専属執事です。あなたと結婚したとしても…、碇だけは私の傍に置いておきます」
「馬鹿なことを言わないでくれ。君は結婚したら僕の事業だけに全身全霊を注いでもらう。
そこにあんな低ランクな執事なんかが居ては邪魔なだけだ」
「やめてください、低ランクではありません。碇は私の大切な執事です」
ここだけは譲れなかった。
私の真剣な目を見たエマは、黙って見守ることを選んだ。
もうエマには見えているんでしょう。
私が碇のことを執事として見ていないことくらい。
むしろそれはエマにしか見えない気持ちなのかもしれない。
「碇がいない場所に……私の笑顔はありませんから」
「はっ、それはなんともめでたくてくだらない友情じゃないか」
友情なんかじゃない。
これは、この関係だけは、あなたなんかが入る隙もないくらいに固いものだ。



