だとしても礼儀がある。
彼は一応はわたしの婚約者なのだから、婚約者として深々と頭を下げた。
ことを大きくはしたくないからと早瀬さんをすばやく元の場所へ戻して、早乙女さんとアリサさんにも舞踏会を引きつづき楽しむようにと促(うなが)した。
「…ごめんね、エマ」
「ううんっ!理沙はわたしの大切な友達だもんっ!あっ、でもやっぱり“バカエマ”に戻して?なんかね、慣れないからっ」
「嫌よ。あなたはバカなんかじゃないもの」
「ええ~っ、変な感じっ」
ほんとうに怪我がなくてよかった…。
私のせいで大切な人が傷つくのだけは見てられない。
そして残るは───婚約者のひと。
「佐野様、もう…私の大切な友達を侮辱することはやめてください」
「…これはあいつもCランク止まりなわけだ」
「…佐野様、」
まったく反省の色がなかった。
彼はきっと今まで、自分の非を認めて誰かに謝ったことがないのだろう。
人に反省文を書かせようとするくせ、自分はそんなことすらしない人。
次なる矛先は私の専属執事へと変わってしまった。
「明日からの代わりは僕が手配をする」
「…なにを、言っているんですか、」
「結婚したらじゃ遅い。あんな執事だから君だってこんな奴らとつるんで、僕にふざけた態度がとれるんだ理沙」



