「…どうしたのよ碇、」
「えっと、あの、いまはエマお嬢様との楽しいお食事中ですので……、」
ほら、こういうところが変わったの。
出るな、行くな、
そんな気持ちを、咄嗟に腕を掴まれた行動が言ってくるみたいだった。
「佐野様はそういうのを嫌う人ってことはあなたも知っているでしょう」
「知っています、でも…あとに回してください、」
「……碇、」
離しなさい、と睨むしかなかった。
だってそうしないと碇の熱い手に溶けてしまいそうだったから。
ハッと意識を取り戻した執事は、次第に青白くなってだらだらと冷や汗を垂らす。
「すっ、すみません理沙お嬢様…!!私の手が勝手に動きまして…っ!!」
「どんな言い訳だよ」
「うっ…、」
私も思った気持ちを代弁してくれたのは、友達の専属であるSランク執事。
的を得ている指摘に、碇はどこか複雑そうに肩をすぼめた。
広すぎる食堂では、わざわざ私たちの会話に耳を傾ける生徒はいない。
「だが碇、その気持ちは俺もわかる」
「…早瀬さん、」



