もっと求めて、欲しがって、お嬢様。





私と碇だけは知っている。

この2人は執事とお嬢様のタブーを平気で破っていることを。


それが特殊な理由・その2だ。



「碇、ここはもうスルーよ」


「…はい、」


「掘り返したらだめなの、こういうのは」


「そ、そうですね…!」



たとえバカエマと早瀬さんがタブーを犯していたとしても、別に私には関係がないことだ。


ただ、碇はちがう。


碇はそんな早瀬さんに影響されてしまったのか知らないけれど、前に私を抱きしめてきたり。

婚約者である佐野様との縁談を「早く破談してください」なんて平気で言うようになってしまって。


そこがちょっとだけ、私として困るだけ……だ。



「あ、ごめんねバカエマ。ちょっと出てくるわ」


「あっ、うん!」



ピリリリリリーーーー、

友達と一緒に過ごしていた食事中に鳴ったスマートフォン。


いつどんなときでも取れるようにと、マナーモードには絶対しない&肌身離さず持ち歩いている。

そうしないと相手の男性がたまに不機嫌になってしまうときがあるから。